- 国際化やIT化、さらには資金調達方法や企業買収の増加など、最近の社会経済情勢の変化に対応するためには、会社に関連する旧来の法律を抜本的に見直す必要がありました。
- 会社に関連する法律が複数に別れていたため、一つに統合してわかりやすくする必要がありました。
- カタカナ文語体の条文では理解しにくい面があるため、「現代語(ひらがな口語体)」する必要がありました。
(1)有限会社が設立できなくなった
設立できる会社の形態は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社(日本版LLC)となり、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。
<ポイント> 現在の有限会社は?
現存する140万社の有限会社については、次の2つの選択肢があります。
1) 有限会社のまま存続する
2) 株式会社に移行する
(最低資本金規制が撤廃されるため、資本金の増額は不要。株式会社にすると、取締役に任期が生じ、決算公告も必要になりますが、対外的な信用度は高まります。)
(2)合同会社(日本版LLC)が設立できる
有限責任(出資者が出資の範囲内で責任を負う)で役員の権限や利益配分などを自由に定めることができ、取締役や監査役を設置する必要もありません。高い技術や特許などを保有する個人やベンチャーなどが、起業しやすい会社形態です。
(3)会社が設立しやすくなった
- 最低資本金規制の廃止
- 資本金の最低基準(株式会社は1000万円、有限会社は300万円が必要だった)がなくなったため、資本金が1円でも株式会社を設立できます。
- 発起設立時の「払込金保管証明」が不要になった
- 設立登記に際して必要であった「払込金保管証明」は、発起設立の場合は銀行等の残高証明で良くなったため、手続きが簡便になり、資金凍結の事態も避けることができます。(※募集設立の場合は、従来通り払込金保管証明が必要です。)
- 「現物出資」が容易になった
- 「資本の5分の1を超える」場合には、裁判所が選んだ検査役の検査を受ける必要があった現物出資に対する規制が撤廃されました。、総額が500万円を超えないときには検査役の調査が不要になり、個人事業の法人化もしやすくなりました。
- 類似商号の規制が撤廃された
- 同一市町村内において同一の営業目的で、同一または類似した商号は登記できないとの規制は、撤廃されます。このため、登記に際して類似商号の有無を調べる必要がなくなりました。
(紛らわしい商号を使った会社から損害等を受けた場合は、不正競争防止法等に基づいて、誤認を招いている客観的事実を立証すればよいので、訴訟を提議しやすくなります。)
(4)「会社のしくみ」を「独自に工夫」しやすくなった
取締役・取締役会、監査役・監査役会、会計参与・会計監査人、株主総会など、「会社のしくみ=機関」に関しては、従来は様々に制約がありました。新「会社法」では、その会社の実情にあわせて選択・設計できるようになりました。
- 株主譲渡制限会社はより自由に
- 定款に「すべての株式の譲渡について取締役会の承認を要する」と定めているのが、株主譲渡制限会社(多くの中小企業が該当します)です。新「会社法」では、株主譲渡制限会社の機関設計の自由度がとくに大きくなりました。
- 取締役会を設置しなくても良い(従来は義務づけ)
- 取締役会を置かない会社では、取締役は最低1名でもよい(従来は3名以上)
- 取締役会を置く会社では、取締役は3名以上必要であるが、「会計参与」を設置すれば監査役の設置が任意となる。
- 取締役2年、監査役4年の任期が原則であるが、定款で定めれば最長10年まで任期を延長できる
- 株主総会がより重要になった
- 取締役会を設置しない会社では、いかなる事項も株主総会で決議することになります。そのため、株主総会が開きやすいよう以下の点などが改正されました。
- 株主総会の招集通知は1週間前でよい(定款で短縮可能)
- 株主総会の招集通知は書面以外の方法でも可能
- 開催場所は任意に決定できる
- 株主に単独での議案提案権が認められた
(5)「会社参与」が設置できる
会計参与とは、取締役と共同して決算書等の計算書類を作成し、株主総会等で必要に応じて計算書類について説明する新たな機関です。会計参与になれるのは、税理士(税理士法人を含む)、公認会計士(監査法人を含む)。専門家が関与することによって、計算書類の信頼性を高めるために創設されました。
株式会社が設立しやすくなったことや、株式譲渡制限会社のクローズアップなど、新「会社法」は中小企業を支援するために整備されたともいえます。前述の各項目以外にも、「会社に関する法律・制度」をわかりやすくするために、以下のような改正が行われています。
- 日々の記帳が重要に
- 「商人は、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表)を作成しなければならない」と明文化されました。また、裁判所の職権で、訴訟の当事者に商業帳簿の提出を求めることができるとされましたので、記録すべきことが起こったら速やかに記帳することが、より重要になったと言えます。
- 株券は原則不発行に
- 株券は原則不発行となり、定款に定めがある場合に発行できることになりました。また、株式譲渡制限会社では、定款で発行を定めていても、株主から請求があるまでは株券を発行しなくても良いことになりました。
- 株式移転が阻止できるようになった
- これまでは、株式会社が譲渡制限を設けていても、相続や合併の際には、会社の承認なしに株式移転が可能でした。新「会社法」では、定款で定めれば、相続等による移転についても「会社の承認」が必要と定めることができます。
- 議決権制限株式の発行制限を撤廃
- 株式譲渡制限会社において、議決権制限株式の発行上限(従来は2分の1)が撤廃されました。
- 株主に剰余金分配
- 株主総会の決議によって、株主に剰余金分配ができるようになりました。ただし、純資産額が300万円未満の場合は分配できません。